
サッカー日本代表の10月シリーズが終了した。何より目を引いたのは、ブラジル代表相手の史上初めての勝利だったが、今回の活動はワールドカップ優勝を目指す日本代表にとって、どのような意味があったのか。サッカージャーナリスト後藤健生が、10月シリーズの「収穫と課題」について検証する。
■アメリカ遠征で消された「強み」
日本代表が警戒感を(過度に)抱いたのは、9月のアメリカ遠征での苦い経験があったからではないか。
対戦したメキシコやアメリカは、ワールドカップ本大会でグループリーグ突破を目指すサッカー界の新興勢力であり(メキシコは北中米地域の古豪だが)、日本とはライバル関係にある。それだけに、メキシコやアメリカはホーム(または準ホーム)で戦うだけに、日本には負けられなかった。
そこで、彼らは日本を分析して「対策」を講じてきた。日本のウィングバック(WB)のところから攻撃を仕掛けることだ。
日本の「ストロングポイント」は2列目であり、両WBである。そのWBに対してサイドから攻撃を仕掛けることで、日本の「ストロングポイント」を消すのだ。守備の専門家ではない堂安律や三笘薫が守備に追われることとなる。そうなれば、日本の「ストロングポイント」は「ウィークポイント」になってしまう。
かつて、イビチャ・オシムがジェフユナイテッド市原(現、千葉)で指揮を執っている頃に、当時、世界最高の選手だったブラジルのロナウジーニョを引き合いに出していつも語っていた。「ロナウジーニョ相手には守り切れない。そうではなく、ロナウジーニョに守備をさせるのだ」と。
相手の「日本対策」の結果、日本のWBは守備に追われる場面が多くなった。
今は、各選手の守備能力も高くなっているが、それでも守備専門のサイドバック・タイプの選手のようにはうまく守れない。そして、WBが守備にエネルギーを割くことで、日本のサイド攻撃の強度は下がってしまう。