
蹴球放浪家・後藤健生は、サッカー取材のために世界中を旅する。むろん国内も足を運ぶ。ACLを観戦するために西日本へ。そこで堪能したのは、アジア各国のサッカーと「百薬の長」!
■「え、子どもが酒蔵見学?」
西条は周囲を山に取り囲まれた盆地になっており、花崗岩層を通って湧き出す硬水(ミネラル分を豊富に含んだ水)が豊富で、酒造りに適していました。
そして、鉄道が開通して製品の運び出しができるようになったことで、酒造業で栄えることになったのです。
酒というのは重量のある商品なので輸送手段がないところでは酒造業は成り立ちません。フランスなどのワイン造りも同じで、主要なワイン生産地は川や海に近く、水運を利用できる地域に存在します。
こうして、西条には加茂鶴、福美人、白牡丹、亀齢、西条鶴、加茂泉、山陽鶴(順不同)といった酒蔵が立ち並び、白壁、なまこ壁の街並みが残されています。
酒蔵巡りは、また重要な観光資源。僕が加茂鶴の蔵を訪ねたときもフランス人の30人ほどの団体客が酒蔵で、説明を受けているところでした。
そして、びっくりしたのが小学生たちが酒蔵見学(体験授業)にやって来たことです。
「え、子どもが酒蔵見学?」
街の人に聞くと、この地区の子どもたちは郷土が誇る街並みを学ぶために蔵の見学に来るそうです。それにしても、学校から授業の一環として酒蔵に連れていかれるのですから、いずれ酒飲みになるに違いありません。
僕が小学校6年生のときに東京オリンピック(1964年)のサッカーの試合に連れていかれた結果、人生を誤ってしまったのと同じように……。