■利益よりも「リスク」のほうが大きい

 2試合の「アグリゲート(集合、総計)」で勝ったチームを「勝利」とし、同点なら延長戦、PK戦で決着をつける。20クラブで構成されている現在のJ1でいえば、1シーズンでこうした「シリーズ」を19回積み重ねることになる。その「勝利」数の多いチームを優勝とする。勝利数が同じときには、1試合ごとの結果を現在と同じ「勝点(第2戦でアグリゲートが同じ場合の延長戦やPK戦はカウントしない)」で順位を決める…。

 たとえば、ヴィッセル神戸がシーズン開幕の「第1シリーズ」で「関西ダービー」のガンバ大阪と当たり、「第1レグ」ではノエビアスタジアムで、そして翌週の「第2レグ」はパナソニックスタジアムで戦う場合を考えてみよう。第1戦は2-1、第2戦は3-4で1勝1敗。パナソニックスタジアムで延長戦に入り、延長戦では両チーム1点を記録してPK戦となり、あくまで仮定だが、神戸が4-3で勝ったとする。

 この結果、得られるものは、神戸は「勝利1、勝点3」、G大阪は「勝利0、勝ち点3」である。どうだろうか? ただこれは、けっして私の好みではない。ただ過去にそのようなアイデアがあったという話である。

 だが結論として、この案は実現しなかった。理由は「盛り上がり過ぎる」ことだった。あまりに2クラブ間のライバル心が剥き出しになり、アクシデントにつながるのではないかという懸念があったのである。この案が考えられたのは1990年代だったが、当時はまだ「フーリガン」に対する恐怖心が人々の心をとらえ、サポーターを過剰に煽るこのシステムは、利益よりもリスクのほうが大きいと判断されたのだ。

(3)へ続く
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