大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第172回「サッカー界が発明した“2本足”の試合」(2) ルヴァン杯でも「2年前に廃止された」世界の常識、Jリーグでも検討された「盛り上がり過ぎる」シリーズ戦の画像
終了間際、フリーキックを浦和10番・中島翔哉が決めて同点に追いついた。撮影/原悦生(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、9月3日、7日に行われたルヴァンカップ準々決勝でも採用されている試合方式「2レグ制」について。

■監督たちの間から起こった「批判」

 今季のルヴァンカップ準々決勝、「浦和レッズ×川崎フロンターレ」の場合、埼スタで1-1、等々力では2-2から延長を経て3-2で川崎が準決勝に進んだが、「アウェイゴール・ルール」が生きていれば、2戦目後の延長戦は行われず、浦和の勝ちとなるところだった。ところが、ルヴァンカップではこのルールは2年前に廃止されていたのである。

 1965年にUEFAが世界に先駆けて採用し、すべての大会で使い、やがて他国でも使われ、国際サッカー連盟(FIFA)もワールドカップ予選で採用して、「世界の常識」となっていた「アウェイゴール・ルール」。しかし、今世紀に入ってさまざまな方面から批判が出るようになっていた。

 アウェイチームに積極的な攻撃をさせようと始められたシステムだったが、第1戦では、逆にホームチームが失点しないようにと慎重になり、消極的なサッカーになるという批判が監督たちの間から起こったのだ。検討の結果、2021年、UEFAは半世紀以上続けてきたアウェイゴール・ルールを廃止することを決めた。

 それを受けて、アジアサッカー連盟(AFC)も、2023/24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ以降のアウェイゴール・ルール廃止を決定、Jリーグもそれにならったという形である。2戦を終わって合計得点が同じなら、「浦和×川崎」と同様、30分間の延長戦となり、それでも決着がつかない場合にはPK戦となる。

 最新のサッカーの公式ルール(2025/26年版)でも、「ホーム・アンド・アウェイの対戦が終了し、競技会規定として勝者を決める必要がある場合」の決定方法のひとつとして「アウェイゴール・ルール」が認められている。しかし実際には、このルールはすでにサッカー史の中のものとなろうとしているのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3