■巨額の収入で「スター選手」を買いあさる
「ボスマン判決」には、もうひとつの重要な要素があった。EUの基本法には、「圏内を労働者が自由に移動する権利」が保証されていた。EU圏内の国民は、どの国ででも自由に働くことができることになっているのだ。だが当時の欧州のプロリーグには、どこにも「外国人選手制限」があった。自国の選手を保護し、代表チームの戦力を維持するためのものだった。「ボスマン判決」はそれも「違法」としたのである。
サッカー界が挙げて反発した「ボスマン判決」だったが、イングランドのプレミアリーグを大きく飛躍させたのは、まさにこの判決だった。いち早くテレビ放映権から巨額の収入を得るようになっていたプレミアリーグのクラブは、EU圏内の国々からスター選手を買いあさり、残った「EU外の制限枠」をブラジルやアルゼンチンのスターの獲得にあてた。そして、またたく間に世界最高のリーグとなったのである。
世界的スターの存在、その選手たちが毎週繰り広げる最高レベルのサッカー、そして1996年までに立ち見席をなくすと義務づけた「テイラー・レポート」によって一新されたスタジアムの最高の雰囲気――。プレミアリーグは世界のサッカーファンのあこがれの的になり、放映権は世界中で争って買われて、さらにプレミアリーグの収入を増やした。









