■今後につながる「4万人満足」の試合

 戦略通りの戦いによってアウェイでの難しい試合で勝点3を獲得した鹿島は、この時点で首位に躍り出た。まだ、10試合以上が残っている時点での首位はそれほど大きな意味はないかもしれないが、「選手交代を駆使しての勝ちパターン」は、今後の戦いでも有効に機能することだろう。

 一方、FC東京は、この日は勝点を積み上げることができなかったが、6月25日の横浜F・マリノス戦(第15節延期分)以降、リーグ戦では3勝2敗と勝ち越しており、天皇杯でも準々決勝進出を決めている。このまま順調にいけば、残留争いから完全に抜け出す日も近いことだろう。

 それよりも、雨の中の鹿島戦に集まった4万人以上の観客を満足させられるだけの試合ができたことは今後につながるはずだ。

 日本では、常に若手の活躍への期待が大きいが、鹿島戦のFC東京を見ているとベテラン勢の落ち着いた試合運びも魅力的に感じることができる。

 もうすぐ39歳の長友も最後まで足が止まらなかったし、タッチライン際での相手選手との駆け引きを見ていると、その引き出しの多さに感心せざるをえない。ちょっとした動きで相手の動きを止めて確実に味方ボールのスローインを取る。そんな動きを見ているだけでも、サッカーの面白さを堪能することができる。

「また見に行きたい」。この日のFC東京のサッカーは、人々にそう思わせるに十分なものだった。

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