大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第169回「人生いろいろ、ゴールもいろいろ」(1)クラブW杯の途中で消えた「ゴール支柱」、久保建英の活躍で解任された「代表監督」、1人で運べる「100キロ」ゴールの画像
どこにでもある「据え置き式ゴール」。最近はアルミニウム製で軽くなっているものの、1つで80キロ以上あり、価格も1対で50万円ほどする。©Y.Osumi
■【画像】代表監督解任を決めた「久保建英」活躍のゴール(写真02)から河川敷で役立つ「折り畳み式」ゴール(写真07)まで、世界ゴール珍百景(1)
 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような超マニアックコラム。今回は、日本や世界の「ゴールのある」風景。

■Jリーグ1年目に記録した「ゴール」越え

 暑い。とんでもなく暑い。こんな中で、読者もグデグデと書かれた長文を読む気はしないだろう。そこで今回は特別企画、「フォトエッセイ」。サッカーのゴールをめぐる21枚の写真である。

 ゴールは、その内側の空間において「縦2.44メートル、横7.32メートル」と決まっている。縦横比は正確に「1:3」である。「母国」英国で使われている「ヤード・ポンド法」では、「縦8フィート、横8ヤード」。すなわち1ヤードは3フィートという豆知識が得られるというわけである。

 シュートを打ってもなかなかこの枠内に飛ばず、たまに飛んでもキーパーに楽々と取られてしまう。しかし、ゴール前に立ってみると、意外に大きい。男子チームのGKならばジャンプすればバーに手が届くだろうが、ヘディングしようとしてバーに頭をぶつけてしまう選手は、ほとんどいない。

 ところが、陸上競技のハイジャンプ(走り高跳び)の世界記録は2メートル45センチ。幅12センチのバーは越えられないが、「サッカーゴール」という空間はギリギリ越えるのである。この記録の保持者はキューバのハビエル・ソトマイヨール。1993年の7月27日、Jリーグの1年目、「第2ステージ・ニコスシリーズ」の第1節と第2節の間に記録した。

 ワールドカップでもJリーグでも、ゴール内からの跳ね返りを防止するために、ゴールポストには後方の支柱を使わず、ピッチに埋め込む方式のものでなければならないことになっている。ところが世界のプロサッカー選手会を統べる「FIFPro」と国際サッカー連盟(FIFA)の最近最大の対立ポイントとなった「FIFAクラブ・ワールドカップ(FCWC)」では、支柱のある「据え置き式」が使われた。

 ところが、グラウンド面から垂直に立つ支柱だけは外してあった。そこで強度を保つために「下面」のゴールライン上を除く3方を太いパイプでつなぎ、さらにその内側にゴールラインから2メートルほどのところにもう1本、太いパイプを渡していた、大会の初期にその2本目のパイプに頭をぶつけて痛がっていた選手がいたが、大丈夫だったのだろうか。

 ところが大会の後半には、この2本目のパイプが消えた。さすがハイテク王国アメリカ。短時間で、埋め込み式にしたのかと思いきや、ゴール前のシーンがアップになると、その「正体」がばれた。なんと、2本目のパイプから後ろの部分を濃い緑のペンキで塗っただけだったのである。

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