この夏、サッカーに「新たな見どころ」が加わるかもしれない。要因となるのは、Jリーグで8月頭から適用される新しいルール、ゴールキーパー(以降、GK)の「8秒ルール」である。この新ルールは、Jリーグに、どのような影響をもたらすのか。サッカージャーナリストの後藤健生が検証する。
■レフェリーが「もっとも気を遣う」瞬間へ
変な言い方だが、これまではGKが手でボールをつかんだ瞬間に両チームの選手にとっては、貴重な休み時間となっていた。一瞬だけだが、集中を切らしてもいい時間だった。だが、これからは、この一瞬の間が勝負を分けることになりかねなくなるのだ。
選手にとってと同様、観客にとっても、サッカー記者にとっても、GKが手でボールをつかんだ瞬間は気を抜いてもいい瞬間だった。
おそらく、レフェリーにとっても一瞬、集中を切らす瞬間だったのではないか? なにしろ、旧ルールにあった「6秒ルール」は適用しなくてもいいことに(事実上)なっていたのだから。
誰もが一瞬、集中を切らして「次の展開」を想像する瞬間になっていた。
だが、これからは誰も集中を切らすことは許されなくなる。
レフェリーにとってもそうだ。GKがボールを手でつかんだ瞬間に、レフェリーはカウントを始めなければならない。カウントをどのタイミングで始めるのか……。もし、そこで「8秒ルール」の適用がなされたりしたら、レフェリーのカウントをめぐって議論が巻き起こるかもしれない。
そして、5秒前から、レフェリーは手でカウントを示さなければならない。同時に、GKからのパスを受ける動きと、それを阻止しようとする動きで、ゴール前で選手同士が錯綜する場面があちらこちらで起こる。GKがボールをつかんでいる間もインプレーだから、そこで接触があればFKが与えられることになる。守備側(GKの側)の選手がファウルを犯せば、攻撃側にとっては直接ゴールを狙える位置でのFKとなる。
これまでだったら、集中を途切れさすことができたはずの時間が、レフェリーにとってはもっとも気を遣わなければならない時間になるのだ。








