■「無理がある」同じルールでの試合
「気候変動」問題が論じられる際に、よく使われるのが「産業革命」期との比較だ。「産業革命の頃から平均気温が何度上昇した」という言い方をお聞きになったことがあるだろう。そして、産業革命以後の化石燃料(石炭、石油)の消費が二酸化炭素濃度の上昇をもたらし、温室効果ガスによって地球の温度が上がったという因果関係もある。
しかし、産業革命があった19世紀というのは地球の気候史の中でも、かなり気温の低い時期だった。
現在の地球は氷河期の中にある。地球は(「億年」単位で見れば)もっと暖かい時期のほうが長く、地上に氷河が存在する時期はすべて「氷河期」なのだが、現在はその「氷河期」の中では比較的暖かい「間氷期」という時期に当たる。そして、さらに短期的な気候変動を見ると、ヨーロッパの中世(13世紀、14世紀)頃は比較的気温が高くて農業が発展したが、その後、18世紀から19世紀にかけて寒冷化して、たとえば19世紀には冬になるとロンドンのテームズ川は凍りついてしまったそうだし、日本でも江戸湾にアシカやオットセイなど北の海にいる海獣類が姿を現わしていた。
何が言いたいかというと、サッカー、あるいは近代スポーツというのは、そのすべてが地球の気温が低かった19世紀に誕生したものだということだ。
地球の平均気温が、当時より2度も3度も高くなった現在も、19世紀と同じルールで試合をするには無理があるのは当然のことだろう。