■ゴールのたび「エンド」入れ替え
第3回大会(1873/74シーズン)2回戦のクラプン・ロバーズ×ケンブリッジ大学は1-1の引き分けに終わった後、2週間後の再試合も1-1、さらに3週間後に「再々試合」が行われ、ようやくクラプンが4-1で勝って決着がついた。「再々試合」の最初である。
初めて「延長戦」が行われたのは、第4回大会(1874/75シーズン)の決勝戦。2万人収容のロンドンのクリケット場「ケニントン・オーバル」で行われたロイヤル・エンジニアズ×オールド・イートニアンズの試合は1-1で90分を終え、この大会から採用された「30分間の延長戦」に入った。だが得点は生まれず、1-1のまま終了した。この試合が、記録に残る公式戦での最初の「延長戦」である。決着は3日後の「再試合」に持ち込まれ、エンジニアズが2-0で勝って初優勝を飾った。
初戦が行われたのは、1875年の3月13日。恐ろしいばかりの強風にさらされ、選手たちは寒さに苦しんだ。当時のルールは、「ゴールが決まるたびにエンドを入れ替える」というものだったため、得点の流れによって、エンジニアズは延長まで合計120分間のうち110分間を「風上」で戦うという、圧倒的に有利な状況だった。それを考えれば、イートニアンズは奮闘したということになるだろう。
ちなみに翌シーズンに向けてのルール改正で、エンドの入れ替えは公平を期してハーフタイムにのみ行うように改められた。