生涯ファンだったチームがセリエA王者相手に善戦するも…厳しい評価「アーセナルにはサッカーの質が欠けている」【亡くなった「史上最高のサッカー・ライター」】(2)の画像
生涯アーセナルを愛したが、批判すべきときには容赦なかった。撮影/渡辺航滋(Sony α‐1使用) 

 史上最高と称されたサッカー・ライターが亡くなった。サッカージャーナリストの大住良之が、その足跡を辿る。

■10年間で「5回」リーグ優勝

 彼はアイルランドからロンドンに渡った歯科医の息子だった。フルネームは、ブライアン・レスター・グランヴィル。1931年9月24日にロンドンの北の郊外にあるヘンドンで生まれた。父ジョゼフはリトアニア系のユダヤ人であり、母フローレンスもロシアとポーランドをルーツとするユダヤ人の血を引いていた。欧州に反ユダヤ主義の嵐が吹き荒れたころ、父ジョゼフは、「ゴールドバーグ」というユダヤ人そのものの名を改めることを決意、電話帳から古代ノルマン人の姓である「グランヴィル」を見つけ出して改姓した。

 父ジョゼフはサッカーを愛し、アーセナルを熱愛した。ハーバート・チャップマン監督の下、アーセナルは1930年代に5回ものリーグ優勝を成し遂げ、黄金時代を築いていた。ブライアンが成長すると、ジョゼフはハイベリー・スタジアムによくブライアンを連れていった。グランヴィルが生涯アーセナル・ファンだったことはよく知られている。

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