
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム。今回は、白い紙に「世界」を創造する素晴らしい仕事。
■「アジアの壁」に巻末インタビュー
こうした「初期」の作品は、サッカーという競技の認知度が日本ではまだまだ低い時代にサッカーファンの数を増やし、一般の人々になじみのあるものにした。しかし、Jリーグが始まり、空前のサッカーブームが到来すると、漫画界もサッカーが大流行となる。
「週刊少年サンデー」では、1992年に『俺たちのフィールド』の連載が始まった。そして何を隠そう、連載スタートに当たって、私は「監修」役を任されたのである。村枝賢一という当時若手だった漫画家が絵を担当し、原作も若い人が担当していたのだが、連載開始当初は反響が悪く、業を煮やした編集者は原作者を下ろし、自ら筋を考えて村枝と「二人三脚」を組んだ。
当初は右足で蹴るときに右手が前に出ていたり、レフェリーが白黒縦じまのシャツ(アメリカンフットボールのように)を着ているのを、私は細かく注意して直してもらっていたのだが(神は細部に宿る)、あまりに細かい指摘に辟易したのか、あるいは、あまりヒットしない作品に監修者にまでギャラを払うことはできないと考えたのか、私も時を経ずしてお払い箱となった。
しかし、この漫画は連載途中から軌道に乗って人気作品となり、1998年まで続けられた。何十冊もの単行本(コミックス)にもなり、2010年ワールドカップ南アフリカ大会の前には新たなバージョンの単行本も発行されて、私は当時、柏レイソルでコーチをしていた井原正巳にインタビューして、その記事を巻末に入れたことがある。