欧州5大リーグを制覇した「唯一無二」の監督、元イタリア代表監督サッキも認めた「最大の資質」【名将アンチェロッティはブラジルに「6回目」をもたらすのか】(2)の画像
ヴィニシウス・ジュニオル(写真)、ハフィーニャ、ロドリゴら世界最高峰のブラジル人アタッカー3人は現在、カルロ・アンチェロッティ率いるレアル・マドリードに所属。そういった意味でも、やりやすいに違いないが…。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 サッカー王国ブラジルの代表監督に、チャンピオンリーグ5回優勝など、指導者として史上最高の実績を誇る名将が就任。2002年の日韓ワールドカップ以来、優勝から遠ざかっているブラジル代表が、カルロ・アンチェロッティを新指揮官として迎えたのだ。2つの「世界最高」の出合いは、何をもたらすのか。その行方を、サッカージャーナリストの大住良之が大検証!

■「6回目」の優勝に向けて

 世界のサッカーの「主役」がブラジルであることに異論を挟む人はいないだろう。過去22回のワールドカップのすべてに出場している唯一の国であり、優勝5回も最多。ワールドカップでの通算成績も、114試合して76勝19分け19敗、総得点237、総失点108。現在の勝点システムで計算すると、総勝点247と、すべての面で群を抜いている。

 しかし、ワールドカップで最後に優勝を飾ったのは2002年の日韓大会。以後の5大会は、地元開催の2014年大会こそ4位となったが、他はすべて準々決勝で敗退している。22大会はすべてブラジル人監督の指揮の下で戦ってきたが、カルロス・アルベルト・パレイラ(1994年大会優勝)もルイス・フェリペ・スコラリ(2002年大会優勝)も、「再登板」は、ブラジルの基準で言えば失敗に終わっている。

 パルメイラスやコリンチャンスで実績を残し、「切り札」として2016年に起用されたチッチ(フルネームはアデノール・レオナルド・バッシ)も、2018年、2022年と連続して準々決勝で敗れ、国民を落胆させた。その後、正式な監督が存在しない混乱の時代が続き、2022年ワールドカップの時点では1位だったFIFAランキングも5位まで落ちた。

 そして昨年1月に就任したドリヴァウ・ジュニオルも、今年3月のワールドカップ予選でアルゼンチンに1-4という屈辱的なスコアで敗れて解任された。全18節の第14節まで終了している南米予選。ブラジルは6勝3分け5敗、勝点21で10チーム中4位。ただ、「自動出場6チーム、7位は最終プレーオフ進出」という「ぬるい」予選のため、「危機的状況」などではない。

 しかし、ブラジルの目標はあくまで6回目のワールドカップ優勝にある。そこに向けて、「世界一の監督」の招聘に踏み切ったのである。

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