■「低さ」と「流出」を結びつけるのは

 さらにもうひとつの仮説を挙げれば、よく言われるJリーグの「空洞化」である。優秀なアタッカーがどんどん欧州に流出している。その結果、攻撃力が落ちている―。ただ、私はこの説にはくみしない。欧州から帰ってくる選手もどんどん増えているし、若い才能も次々に現れているからだ。

 そして何より、欧州のクラブに移籍するのは優秀なアタッカーだけでなく優秀なディフェンダーにも言えることだ。「2.17」という得点数の低さを欧州への流出と結びつけるのは「筋違い」のように思う。

 もちろん、4月16日水曜日の3試合ですべて3得点以上が記録され、1試合平均3.67点、シュート19.33本という活発な試合になったように、シーズンが進むにつれて選手も相手の「5バック」や判定基準に慣れ、激しい守備を上回る攻撃を展開できるようになる可能性は十分ある。それこそ、今季の「判定基準」が目指すものなのだが…。

 Jリーグは、FIFAのようには、ルール(ルール自体は国際サッカー評議会=IFAB=が制定するものだが、FIFAの意向は大きく反映される)を変えることはできない。といって、かつてのように、「エンターテインメントづくりのための延長Vゴール、PK戦」のような小手先の施策に走るのも馬鹿げている。

 両ゴールの間をスピーディにボールが行き交い、選手たちがきびきびと動いて果敢にシュートを放つ試合、1試合に3回は「得点」が見られる試合が増えれば、Jリーグは必然的に見ていて楽しく、「また来たい」と思えるようなリーグになる。それには、リーグ、クラブ、監督、選手たちの全員が、「現状」をしっかり認識し、それを変える努力をしなければならない。Jリーグを「右傾化」させてはならない。

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