■準々決勝での「衝撃的な判定」
さらに、1994年ワールドカップ・アメリカ大会では、それまでの伝統的な勝点制度(勝利に2、引き分けに1)という勝点制度を廃止し、「勝利に3、引き分けに1」とするものを採用した。「引き分け」の価値を相対的に落とし、勝利を目指す姿勢(=攻撃的な姿勢)を奨励するものだった。
1994年ワールドカップの結果を見て、その年の秋、FIFAはグラスルーツ(草の根)を含むすべてのサッカーで勝点を「3-1」とすることを決めた。
この1994年ワールドカップでは、オフサイドの新しい解釈も行われ、それがその後のスタンダードとなった。それまでは、パスが出された方向に攻撃側のオフサイドポジションの選手がいたらオフサイドということになっていたのだが、準々決勝のブラジル×オランダで衝撃的な判定があった。
ブラジルが前線にボールを送ったとき、その先には、FWロマーリオがオフサイドポジションで自陣方向へゆったりと歩いていた。オランダのDFは当然オフサイドと思って足を止めたが、ロマーリオはまったくプレーのそぶりを見せず、オンサイドのポジションから走り出たFWベベットがボールを受けてそのまま進み、ゴールを決めてしまったのだ。
それまでの「オフサイド解釈」と大きく違う判定は議論を呼んだが、FIFAは「正しい判定だった」と主張し、新しい基準となった。ちなみに、主審はコスタリアのロドリゴ・バディーリャ、副審はバーレーンのユシフ・アブドゥラー・アルガタンだった。
このような「努力」の結果、1994年のワールドカップでは52試合で141得点、1試合平均2.71、前大会比122.61%と、得点数の大きな上昇をみた。その後のワールドカップでは、2006年ドイツ大会2.30、2010年南アフリカ大会2.27と低迷したものの、以後の3大会ではコンスタントに2.6台を記録している。