
25年3月に迎えた代表ウイーク。高井幸大を森保ジャパンに排出していた川崎フロンターレは、その貴重な中断期間を“積み重ね”に割いていた。J1リーグ戦に加えてACLEもこなす過密日程の中では直近の試合対策が主となる。長谷部茂利監督は、そのまとまった時間をチームとしての厚みをもたらすために使っていたのだ。
それは選手も同様だ。晴れた麻生グラウンドでの居残りトレーニングで、高卒ルーキーのDF野田裕人がDF佐々木旭と対峙していた。交互にボールを持ったうえで、ドリブルと、その守備を磨いていた。そこに三浦颯太も加わると、野田を中心に3人が繰り返し対峙していく。宮城天もさらに混じって先輩3人が、試合にまだ出られない後輩のためにいろいろなものを伝授している姿は、見ていて微笑ましかった。
クラブハウスに戻ってきた三浦に後輩への“指導”について聞くと、三浦はすました顔で、「僕は何も教えていません」と話す。そして、「一緒にトレーニングしていたんです」と続けたのだ。“先輩が後輩に教える構図”で勝手に見ていたが、サッカー日本代表としての出場歴がある三浦であっても、ルーキーを対等に見て技を磨いていたのである。
なお、野田に聞けば、「颯太クンが一緒にトレーニングやりたそうだったんで、入れてあげました……」と話すと、「……ウソです(笑)」と筆者を笑わせてみせた。茶目っ気たっぷりに答えたこともあるが、後輩にとっても“先輩”という壁を感じずにトレーニングできているのを感じたのだった。