【J1川崎を取材して感じた「育てる力と心」とは(1)】居残りトレーニングを最後まで追い続ける前指揮官が本当に見ていたものとは。鬼木前監督が話していた「みんな平等だと伝えたい」の言葉の画像
川崎フロンターレの居残りトレーニングで選手と一緒に汗を流し、そして見守っていた鬼木達前監督(24年撮影)   撮影:中地拓也
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 サウジアラビアでのACLEファイナルズを迎えようとしている川崎フロンターレ。等々力だけでなく、麻生も含めてずっと追い続けることでいろいろなものが見えた。勝ち負けの中でどう向き合っていくのか、試合に出ている選手も出られない選手もどのような成長をしようとしているのか――。そうした機微が筆者の喜びであり、支えだった。

 アジア青覇という大一番を前に振り返った時に、成長しようとする力と心、育てようとする力と心が随所に見られる日々だったと改めて感じている。クラブ8つ目のタイトルを目前としているこのタイミングで、その一部をまとめたい。

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 麻生グラウンドでの練習で、昨年まで大きなウエイトを占めていたのが居残りトレーニングだった。全体練習が終わると、選手は素早くそれぞれのトレーニングへと移る。メディアは「居残りトレーニング」と書くが、チーム内では追加練習や個人練習などとしている。鬼木達前監督(現・鹿島アントラーズ監督。以降、鬼木監督とする)の下では特に時間が定められているわけではなく、思い思いに汗を流していた。
 炎天下であっても、厳しい寒さであっても、最後の選手が終わるまでには1時間以上かかる。移動やチームスケジュールなどで、スタッフから「もう上がって!」と言われても、多くの選手ができる限り粘る。
「今日も長いですね」
 練習公開のたびにこうした言葉がメディア間でかわされるのは、時候のあいさつのようなもの。そして、その日も無事にトレーニングが行われている証でもある。
 いずれにせよ、それを最後まで見届けるのが鬼木監督の日課だった。選手より先に上がったことは、おそらく見たことがない。もちろん、コーチングスタッフも含めて。

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