■磐田のCBの「1試合平均プレー数」が多い意味

 磐田のハッチンソン監督が、5節からスタメンに手を加えたのは前述したとおりである。角とともにスタメンに抜てきされた選手のひとりが、GK阿部だ。

 アルビレックス新潟から加入した彼は足元の技術に長け、ビルドアップに積極的に関与していく。当然ながら千葉も対策は講じており、開始3分には自陣ペナルティエリア内でのつなぎでボールを失い、あわや失点という場面を作られた。27分にも千葉に前からハメられてしまうが、42分には鮮やかに引っ繰り返す。

 阿部がDFへつなぐのではなく中盤の頭越しへ蹴り出すと、ペイショットから松原へつながる。この縦パスで千葉のダブルボランチを置き去りにし、千葉の左SB日高大を食いつかせ、右サイドに広大はスペースが生まれる。松原からパスを受けた右MFジョルディ・クルークスが、際どいクロスを供給するという場面を作り出した。

 磐田は1試合平均パス数や平均ボール支配率で、リーグトップクラスの数字を弾き出している。個人に目を移せば、右CBで開幕から7試合連続でフル出場を続けている江﨑巧朗、5節から左CBに入っている上夷が、1試合平均プレー数でリーグトップを争っている。両CBがそれだけプレーに関わっているのは、自陣からビルドアップを試みていることが関係している。

 この試合の42分の場面のように、前線からのプレスを引っ繰り返すことができれば、対戦相手は次もいくべきかどうかの判断に迷うだろう。目の前の相手だけでなく、次節以降の対戦相手に対しても、精神的なプレッシャーを与えるものとなっていくはずだ。その意味で、42分のシーンは価値あるものとなった。

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