■日本流「非コミュニケーション」
エスカレーターの片側空けの習慣は、ちょうど僕がヨーロッパ旅行に行った後の1970年代後半には日本でも一般化しました。それを見て、僕は「ああ、日本もようやく文明国になったんだなぁ」と思ったものでした。しかし、その後、日本ではその習慣の規範性が強まりすぎて、それに従わない人を「非常識な人」あるいは「田舎者」と見なすようになってしまいました。規則を守りたがる日本人らしいところです。
ところが、知らない人どうしが「ニコッ」と笑顔を見せ合う習慣は、日本では今でもまったく定着していません。日本人同士の場合には、笑顔を見せるよりも、ちょこんと軽く会釈するのがマナーのようですが、会釈するのは多少とも面識のある人同士であって、見知らぬ人同士では無視し合うことも多いようです。
海外のホテルのエレベーターの「かご」の中で、外国人と一緒になると「ニコッ」と笑顔をかわすのに、(見知らぬ)日本人と一緒になると互いにそっぽを向いて、無視し合うといったことをよく経験します。
見知らぬ他人と出会う機会も多い都市生活では、知らない人とコミュニケーションを取ることも必要のように感じるのですが……。