■欧州で必要とされる「ニコッ」
その他にも、ヨーロッパには都市生活のためのルールがいくつもあります。
たとえば、入口を開けて中に入った人は、後から来る人のためにドアを押さえて開けたままにしておくという習慣がありました。後から来た人は、ドアを押す必要がないわけです。日本でも、そうする人はいますが、ヨーロッパではそうするほうが一般的です。
また、エレベーターの「かご」や列車のコンパートメントの中などで、見知らぬ人と一緒になったときに、口角を上げて「ニコッ」と笑うような表情をするのもルールの一種です(エレベーターの人が乗る箱のことを「かご」と言います。昔、本当に籠状の物に乗っていた時代の名残なのでしょう……)。
互いに「私はあなたに対して敵意を抱いてはいませんよ」ということを確認し合うわけです。異民族と陸上の国境を挟んで接しているヨーロッパではこういう非言語的コミュニケーションが必要だったのでしょう。
しかし、そういう習慣がない日本人はなかなか真似できません。僕が自然に、ニコッという表情ができるようになったのは、1980年代になって頻繁にヨーロッパに行くようになってからのことでした。