■「ゲームコントロールを覚えなければいけない」
そんな攻め急ぐチームに、最終ラインから落ち着くようにジェスチャーを見せていたのが高井幸大だ。この試合でさらに一回りも二回りも成長した姿を見せていたこのサッカー日本代表DFも、「速い攻撃になればなるほどやっぱり正確性を失いますし、選手としては行きたいのは当然ですけど、ゲームコントロールはもう少しチームとしても覚えていかないといけない」と警鐘を鳴らす。
ポゼッション率を上げることとゲームコントロールは当然、意味が違う。どうすれば相手にリズムを与えないのか、どうすれば相手はいやなのかの判断を、ピッチの中でしなければならない。当然、早く攻める場面なのか、そうでない場面なのか。
そうした中で指揮官は後半39分に瀬川祐輔を投入し、中盤中央を瀬川、脇坂泰斗、大関友翔という攻撃的な人選とした。
「勝負に出るぞ」
指揮官がこう言葉にしたという攻撃的な姿勢を見せた。結果的にはゴールネットを揺らすことはできずスコアレスになっているが、長谷部監督としてのパワープレーの選択肢を一つ見せている。
「あのダブルボランチとトップ下の陣形でいくと、自分たちは真ん中を崩されるかも、やられるかもしれない。でも、自分たちが点数を取る・取りに行ける攻撃的な形だから、勝負に出るから、どちらになるか分からないけど“行ってこい”“頼んだ”というメッセージを伝えて勝負に出ました」(長谷部監督)
チームは今、攻撃を積み重ねようとしている中にある。守備についての理解度にもまだ差があるが、いかにして攻めるかも探っている。
その成果はすぐには出ない。しかし、ACLEファイナルステージに挑む今、そのさらなる可能性だけはつかみ取っておきたいところ。この岡山戦を、悔しさとともに糧にするしかない。
(取材・文/中地拓也)