■違いを生み出す「当たり前の献身性」

 今節はロアッソ熊本とのアウェイゲームだった。RB大宮が積み上げてきたものは、得点シーン以外にも表われる。

 29分だった。左ウイングバック泉柊椰がドリブルで仕掛け、ペナルティエリア内からクロスを入れる。これが相手DFにブロックされ、局面が入れ替える。

 左CB下口稚葉が泉をサポートしており、左サイドは人数が足りていない。カウンターを浴びそうなシチュエーションだったが、左シャドーの杉本健勇が献身性を発揮する。敵陣左サイドで相手の右ウイングがパスを受けると、猛然とアプローチしてスライディングでボールをタッチ外へ押し出したのだ。熊本の攻撃を断ち切り、カウンターを防いだのである。

 その前の局面で、杉本は泉にパスを出していた。ゴール前へ詰めていなかったので、当然のカバーリングだったと言ってもいい。

 ただ、長澤監督指揮下のRB大宮は、その当然のプレーを誰もが怠らない。「当たり前」に徹底的にこだわることで、スキのない試合運びを実現しているのだ。

 55分の先制点の場面からも、「当たり前の献身性」が読み取れる。

 MFアルトゥール・シルバのパスをFW藤井一志が敵陣で受け、そこから杉本、FW豊川雄太が連続してシュートを放ち、最終的に泉がプッシュしたのだが、ボランチ小島幹敏がペナルティエリア内までランニングしている。彼自身はボールに関わることはなかったものの、守備側の注意をひきつけ、チームメイトに選択肢を与えたその動きも、得点を呼び込んだ一因と言っていいはずだ。

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