■パスに合わせてゴールへ「全力疾走」

 1987年の9月に、私はポルトガル・リーグの試合で初めてマジェールを見た。相手はヴァルジンSCという現在は3部でプレーするクラブで、ポルトから車で30分ほど北に行ったヴァルジンという小さな町の海辺の小さなスタジアムだった。その試合で、マジェールはあの三笘のような「天才」を見せたのだ。

 後半のなかば、試合はポルトが1-0でリードしていたが、ヴァルジンもよく守っていた。それを一挙にこじ開けたのがマジェールの「天才」だった。前線のやや左サイドにポジションをとっていた彼は、自陣から送られてきたロングパスに合わせてヴァルジンのゴールに向かって全力疾走し、真上から落ちてくるボールを走りながらインステップでコントロール、バウンドさせずに、そのまま左足で中央に送って2点目のアシストをしたのである。インステップに乗せてボールをコントロールするまでは三笘とほとんど同じプレー。まさに茫然とさせられるプレーだった。

 その翌年6月、ミュンヘンのオリンピックで、オランダの天才選手が煩雑な「弾道計算」を瞬時に処理し、欧州選手権の決勝戦で誰も真似のできないゴールを決めてみせる。(3)に続く。

(3)へ続く
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