■香港から空中回廊を渡って「入境」

 香港は中華人民共和国の「特別行政区」です。

 19世紀以来英国植民地だった香港は1997年に中国に返還されましたが、本土とは異なった法律や政治制度を維持しており、返還後50年間は“高度な自治”が約束されているのです(しかし、中国の習近平政権は約束を無視するかのように、香港に対する政治的な締め付けを強め続けています)。

 その香港特別行政区と中国広東省の間には深セン河という小さな川が流れています。香港側から深センに行く空中回廊は、その深セン河の上をまたいでいるのです。

 そして、この空中回廊を渡り切ったところに中国側への入境審査場があります(中国では「入国」、「出国」ではなく、「入境」、「出境」と言います)。

 そして、その審査場でパスポートに入境スタンプを捺してもらって、そのまま階段(エスカレーター)を降りると、深センの中の「福田」(フーティエン)という街に出るわけです。建物の中に地下鉄駅もありますから、すぐに深セン市内のどこにでも行けるというわけです。

 境界越えは簡単ですから(とくにビザ免除が再開されてからは)、香港に用事がある人でも、香港のホテルは高いので深センに泊まって毎日境界を越えて香港と行き来することがあるそうです。

 こうした国境施設を中国語で「口岸」と言います。英語では「Port」と書いてあります。「Port」は「港」ですが、海とは関係ありません。この香港側、中国側全体の施設が「落馬洲口岸」というわけです。

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