■3バックを用いた理由とは

 サイレント変更で奇襲をかけられた格好の川崎だったが、試合後、長谷部茂利監督は地元メディアから「福岡で脅威と感じた部分は?」という質問に対し、少し間を空けて「特にありませんでした」と答えている。実際にピッチに立っていた選手もうまく対応できたとの認識を持っており、90分を通して「組織としてやられた部分はなかった」との言葉も聞こえてきた。被弾した失点場面も、ロングボール対応での個人的なミスだったからだ。
 事前想定と異なる戦い方となりながらも、川崎はなぜ対応できたのか。当然、メンバー発表後に選手には「3バックで来る」とは伝えられていた。また、直前ではあったものの、追加でのスカウティングも行われた。
 そのうえで重要だったのが、直近の柏レイソル戦だ。リカルド・ロドリゲス監督が新たに率いる第2節の相手は、3-4-2-1だった。その試合後、3バックの相手に苦慮した部分がチーム内ですでに整理されており、その感覚が残っていたという。
 山本悠樹は「フォーメーション的にもレイソルっぽかったので、同じ感じでされるとちょっとイヤだったので、出させない立ち位置を取りながら、安定して押し込んじゃえばっていう感覚は僕個人としてはありました。そのために、相手のプレスを発動させない立ち位置を意識しながらやっていました」と振り返る。
 実はそもそも、福岡の選手が3バックには慣れていなかった。キャンプ中に実施された練習試合の中で部分的に3バックを試したことはあったが、それ以上の積み上げはない。「失点を少なくするため」という目的でシステムを変更したが、福岡のある選手はその効果は薄かったという感触を口にした。

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