■「ハードワーク」について
監督自身が「ターンオーバー」を忌避し始めたのはいつ頃からなのか、聞いてみると、「自分がそういうポジションで選手時代を過ごしたことがあるからすごく嫌な気持ちですね」とし、現役時代に遡るとした。
「(ターンオーバーは)“2軍”っていう言い方とはちょっと違うじゃないですか。その言葉からくる切なさとか悲しさとか、あると思うんですよ」
ここで、長谷部監督がさらに切り出す。
「私、ここでハードワークって言葉の話をしましたっけ?」
問われた筆者が「聞いてないです」と返すと、改めて「ハードワーク」についても説明する。
長谷部監督がある人に、その語源について聞いたのだという。そこには、“強制的に働かせる”といった意味合いも含まれているのでは、ということだった。
そのため、「それをサッカーで使うと、監督、コーチ、クラブが(選手を強制的に)働かせてるっていうような印象になる言葉だと自分は認識した」のだという。
長谷部監督は川崎フロンターレでの始動日にも取材対応しており、その際、筆者が「監督として大事にしていること」を尋ねてみると、「プレーするのは選手であること」という考えを示していた。また、初めて指導する選手に対してグラウンドの上で敬語で指示を出していたことも印象的だった。より気持ちよくプレーしてもらうために、言葉の使い方についても長谷部監督だからこその心配りをしているようだ。
(取材・文/中地拓也)