
10年以上に及ぶシリアの内戦が終結を迎えた。かつて、サッカージャーナリストの後藤健生は、ワールドカップ予選観戦のために現地を訪れたことがある。その際、親切にしてくれた人々は、どうしているのか? サッカーを通じて生まれた縁と新生シリアの今後に思いを馳せる。
■「最初の人間」が住んでいた山
ホテルの敷地を出て前を見ると、大きなハゲ山が見えた。ほとんど草木が生えておらず、白っぽい岩山だった。
日本では、山にたくさんの木が生えていて、緑が濃いのが普通ですが、多くの国では、山というのは草木が生えていない場所なのです(色つきの地図で平野部が緑、山は茶色になっているのは、そのためだという説もあります)。
ホテルの従業員が教えてくれました。
「見ねぇ、あれがカシオン山だよ」
そう言われても、日本人にはピンときませんよね。
カシオン山は、キリスト教やイスラム教で神によって造られた「最初の人間」とされるアダムが住んでいたところで、イエスも一時はここに滞在していたそうです。また、カインが弟のアベルを殺した「世界で最初の殺人事件」が起こったのも、この山だと言われているのです。
つまり、ここは旧約聖書の舞台なのです。