■失点の可能性が「低くなる」ヘディング 

 ここでの関川は、ボールウォッチャーになって久保をフリーにしている。確かに、マイナスからのパスをケアするのは難しい。しかし、関川は草野がトラップする前には久保を「ちらっと」見ているのである。そこから視線を逸らしてボールだけしか見ていない。
 さらに、草野がクロスを入れた際に、右SBの濃野公人がケアに行くのだが、あそこはもっと体を張ってスライディングしてもクリアに行くべきだった。こうした守備の詰めの甘さが、鹿島にはうかがえた。

【前半15分の鹿島の同点場面】
 鹿島のコーナーキック。水戸の守備はストーン(守備側のチームが、ニアサイドへのボールや低いボールを跳ね返すために配置する選手・及びその役割のこと)に草野と久保の2人の選手をおいたマンツーマンとゾーンの併用である。
 蹴られたボールを最初にクリアしたのは、CBの板倉健太だった。バイタルエリアに跳ね返したボールが鹿島の選手に渡って、ヘディングで高いボールをゴール前に入れられて、今度は久保がクリアするが、ボールに勢いがなく鹿島にボールが渡る。濃野がシュートしたボールに田川が触れてゴールになった。セットプレーからの水戸の失点だった。人数が足りていて二度も先にボールに触れているのに失点してしまう。この失点はクリアの甘さがもたらしたとしか言えない。
 ヘディングでクリアしたボールを、首を振ってバイタルエリアに返す選手が多いのだが、ボールがきた方向にそのままヘディングしたほうが失点の可能性は低くなる。
 久保のヘディングもそうだが、クリアは「外」か「遠く」が鉄則だ。「この辺に返せばいい」というクリアの仕方では、いつまでたってもセットプレーからの失点は免れない。セカンドボールをどこに跳ね返すのかが重要になってくる。(3)に続く。

 

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