タイミングを見計らっていたかのように、その足取りに迷いはなかった。1月22日の練習後、大黒将志コーチは現役時代さながらの“嗅覚”を見せた。その先にいたのは、FWエリソン。24年シーズンから川崎フロンターレのユニフォームに袖を通す雄大なポテンシャルを持つ9番だ。
大黒氏は中山通訳を挟みながら、しっかりとコミュニケーションを取っている。その身振り手振りから、雑談程度のものではないことはすぐに分かった。
大黒氏は今季からフロンターレのコーチに就任しており、指導者と選手という関係であるために話し込んだとしても何ら不思議ではない。しかし、この日は21日のトレーニングマッチ翌日。リカバリー中心のメニューを消化しただけだった。仮に、トレーニングマッチのついてであれば、21日にチャンスはあったはずだ。
どんな話をしていたのか――。
世界でも結果を残したかつてのサッカー日本代表のストライカーに会話について聞いてみると、「エリソン個人のための映像を作って見せて、”こういうポジショニングもあるよ”っていう感じで話をしました」と明かす。日の丸のユニフォームで結果を残した大黒氏による“個人レッスン”が行われていたのだ。