大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第155回【世界を変えた「日本のサポーター」とウルトラマン】(3)欧州や南米の「希望」となったJリーグ、乗り越えた「存続」の危機と解放された「激務」の画像
ガンバ大阪のホームであるパナソニックスタジアムには、下層にアウェイサポーター席が存在しないため、広島サポーターは最終節での逆転優勝へ向け、上層階から応援した。この節度を守るサポーターが世界のサッカーの手本となった。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、ゴール裏のアツ~い奴ら。

■インチャが暴力化「バラ・ブラバ」に

「トルシーダがうんちゃらこうちゃら…」と、隣にいたブラジル人の記者があきれたようにつぶやいた。私は「トルシーダって何?」と聞いた。「あいつらのことだよ」。ブラジルではサポーターのことを「トルシーダ」と呼ぶことを初めて知った。

 欧州では、多くの国では、サポーターの集団は「ウルトラス」か、「supporters」という英語を翻訳した名称で呼ばれている。しかし、ブラジルでは、ポルトガル語で本来「歓声」を意味する「torcida」と呼ばれているのだ。

 アルゼンチンでは「インチャ hincha」である。この言葉は「仲間」を意味するらしい。「インチャ hincha」は、ウルグアイで使われ始めた言葉だという。だが「インチャ」が暴力化すると「バラ・ブラバ」と呼ばれ、これは「フーリガン」に相当する。

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