■「荒れていた」世界のサッカースタジアム

 試合前、いきなり騒ぎが始まった。赤緑白の人々がなだれを打ったように走りだしたのだ。見ると、赤黒の人々がそれを追いかけ、取り囲むように襲いかかろうとしているのだ。この時代、世界のサッカースタジアムは荒れていた。しかし、これほどの「闘争」(というより一方的な攻撃)を見たのは初めてだった。

 1985年の欧州チャンピオンズカップの決勝戦でイングランドのリバプールのサポーターがイタリアのユベントスのファンに襲いかかり、39人が死亡するという大事件が起こったが、私が1977年にマラカナンで見た光景は、それ以上の「暴動」だったかもしれない。

 しかし、マラカナンスタジアムの2階席は大半がコンクリート打ちっぱなしの緩い階段状の立ち見席で、フルミネンセのサポーターたちは襲われ慣れているのか、たくみにフラメンゴの追撃をかわし、散り散りになって逃げ切った。(3)に続く。

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