■代表戦で「ブラジル人」同士が激突
1977年に初めて南米サッカーを取材したとき、リオデジャネイロのマラカナンスタジアムで最も驚いたのは、サポーター同士の争いだった。ブラジル対イングランドというけっこうなカードで、スタンドには7万7000人も入っていたのだが、大半が立ち見席だった当時のマラカナンでは、観客席には「無人地帯」がずいぶん広く残っていた。
ブエノスアイレスのボカ・スタジアムでは、ファンのほぼ全員が白と水色のアルゼンチン代表のユニフォームを着ていた。しかし、当時のマラカナンでは、ブラジルの黄色いユニフォームを着ているファンなどほとんどいなかった。みんな、それぞれ自分の応援するクラブのユニフォームを着ていたのだ。そして、その多くは、赤黒のフラメンゴか、赤緑白のフルミネンセのユニフォームで、しかも、それぞれに固まって集団をつくっていた。
すなわち、「ブラジル代表戦」といっても、サポーターはリオの2大人気クラブ、フラメンゴとフルミネンセのサポーターで、自クラブ所属の選手に無条件で声援や拍手を送る一方、ライバルチームの選手にはブーイングを浴びせるという状況だったのだ。