
蹴球放浪家・後藤健生は、世界中のサッカーを巡るために、駅や空港、スタジアムなど、各国の施設を利用する。その際に避けては通れないのが、手荷物検査だ。国や場所、実施する人によっても違う検査から、サッカーのリスク管理にもつながる、各国の「お国柄」を読み解く!
■イタズラ心で「反北本」を持ち込み
どう考えても、厳しい手荷物検査があると思っていたら、ノーチェックだったのでビックリしたのが北朝鮮でした。
1985年の4月にワールドカップ・アジア1次予選の北朝鮮対日本の試合を観戦に、代表チームに同行したときのことです。
僕は、イタズラ心を起こして、持ち込みの手荷物の中に『凍土の共和国』(金元祚、亜紀書房)という、当時有名だった「反北朝鮮」の本を入れておきました。北朝鮮に帰国した在日朝鮮人の悲惨な状況を告発した本です。
これを見つけたら、彼らがどんな反応するだろう……。と思っていたのですが、結局、荷物検査などまったくありませんでした。
このときの北朝鮮は、どういうわけか我々に対して非常に融和的でした。写真撮影も自由でしたし、平壌(ピョンヤン)の街中を単独で自由に歩くことさえできました。
韓国では、ソウルの南山(ナムサン)に立っているソウル・タワーに上るときにも、カメラを取り上げられるそんな時代だったので、平壌で自由行動ができたのは驚きでした(「蹴球放浪記」第5回「本場ピョンヤンで犬を喰らう」の巻など参照)。