■「今日負けたとして、僕は絶対にすみませんでしたと言いたくない」
それだけに、森山佳郎監督がユアテックスタジアムの最終節で語った言葉には重みがあった。大分トリニータを2-1で破った11月10日。逆転でJ1昇格プレーオフ進出を決めた試合直後のピッチの上でのことである。
その喜びについて語ったあと、森山監督は「今日負けたとして、僕は絶対にすみませんでしたと言いたくないなって思ってました」と話す。つまり、J1昇格を目標に戦ってきたチームがそれを達成できなくとも、頭は下げたくなかったというのだ。
その理由について、選手もスタッフも寝る間も惜しんで昇格のために注ぎこんだからだと指揮官は明かす。沖縄キャンプからここまでの生活で、これ以上できることはないという自負が生まれた証である。
こんなにも熱い森山監督だが、戦略眼はいたって冷静だ。8月の時点で、「仙台は5・6位でリーグ戦を終えて、プレーオフを下から勝ち上がった方がJ1昇格を果たせるのかなというイメージもあります」と話して、チームが昇格するために何が最適なのかを見定めていた。
「大きな力に食らいついていく立場のチームで仕事をする方が合っていると思いました」
自身の立場と、ベガルタ仙台の立場とをシンクロさせて、そうも語る。
その通りに事が進むような世界ではないが、森山佳郎監督にとって望むべき挑戦する立場として3位のV・ファーレン長崎と対戦する。引き分けの場合はホームチームの勝ち上がりがとなる難しい一戦だが、逆に言えば、勝利だけを求める分かりやすい立場だ。
その長崎戦を前に、森山佳郎監督や敵将・下平隆宏監督、さらに秋野央樹や郷家友太は何を思っているのか――。
(取材・文/中地拓也)