■ゆっくり回しているのに「奪えない」パス
全盛期の川崎は、とにかくショートパスを回し続けた。パスを回し続ける中で、相手の分厚い守備網の中にスペースを見つけると、そのスペースを狙って選手が入り込み、パスを通して一気に攻め込む。そこで、さらに相手陣内深くでパスを回して、再びスペースを作って攻める……。
もし、そのスペースを埋められてしまったら、無理にパスを通すのではなく、必ず攻撃を中止して、いったんボールを戻して、再びパスを回しながら相手陣内にスペースが生まれるのを待つ。
そして、その間、ゆっくりとパスを回しているにもかかわらず、相手はチャレンジすることもできなかったのだ。
大きなスペースを見つけて走らなくても、ほんの1~2メートル動くことで相手のマークから逃れることができれば、それはフリーになったのと同じだった。ちょっと、体の向きを変えるだけでも、マークは無効化できる。
そうした作業を丹念に行いながらパスを回すから、川崎のパス回しは非常にゆっくりしているにもかかわらず、相手チームはチャレンジに行けなくなってしまうのだ。
2012年から5年間、川崎で監督を務めた風間八宏(現、南葛SC監督)が落とし込んだ戦い方だ。