サッカーは世界中で愛されているスポーツである。日本から世界へと羽ばたく選手がいる一方で、近年は世界が日本のクラブに興味を示すことも。近年、世界的な大資本が複数のクラブを保有する「マルチオーナーシップ」が流行しているが、その波が日本に到達したという。この9月には、世界的な飲料メーカーが大宮アルディージャを買収したが、今後も起こりうると警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリスト大住良之だ。そうした「マルチオーナーシップ」は、日本のサッカー界へ、どのような影響を与えるのか? 「問題点」と「可能性」を考察する。
■チェルシー、ドジャーズ、レイカーズも…
NHKの過剰な報道もあり、2024年は日本中が「大谷熱(大谷フィーバー)」に冒されてしまった観がある。その大谷翔平選手が所属するアメリカ大リーグの「ロサンゼルス・ドジャーズ」が、サッカーのイングランド・プレミアリーグ「チェルシーFC」と兄弟のような関係にあるのをご存じだろうか。
チェルシーは2022年にアメリカの投資家トッド・ボーリーに約7000億円で買収されたが、彼はドジャーズやアメリカ・バスケットボールの「ロサンゼルス・レイカーズ」などの共同オーナーになっているのだ。もちろん、大谷選手がチェルシーに移籍するわけではないが…。ボーリーは、今年6月にはフランス・リーグ1の「RCストラスブール」も買収し、サッカー界での事業を広げている。
さて、日本では、NTTが主要株主であったJリーグの大宮アルディージャが、9月に「レッドブル・グループ」に買収されたことが話題になっている。今季J3リーグで戦っていた大宮だが、圧倒的な強さで10月に早々と優勝とJ2昇格を決め、さらに来季からのクラブ名称を「RB大宮アルディージャ」とすることも発表された。
「レッドブル・グループ」はオーストリアのザルツブルクに本社を置く国際企業である。エナジードリンク「レッドブル」のメーカーとして、さまざまなスポーツのスポンサーになって知名度を高め、現在では世界のエナジードリンクでは最大のシェアを誇っている。そしてシェア拡大とともにF1をはじめとしたスポーツチームやサッカーのクラブを傘下に収め、世界のスポーツ界に影響を与え始めている。