70メートルはあっただろうか。自陣の中ほどから敵陣のゴールライン際へ、川崎フロンターレの左サイドバック、三浦颯太は一直線に駆けあがっていった。
雨が降り続ける敵地・町田GIONスタジアムで5日に行われた、FC町田ゼルビアとのJ1リーグ第33節。川崎が1点ビハインドで迎えた28分だった。
右サイドでFW山田新が数人の相手に囲まれた状況で粘り、体勢を崩しながらも中央のMF山本悠樹へボールを託す。山本はすかさず右足アウトサイドを駆使し、左タッチライン際に張っていたFWマルシーニョを前へ走らせるパスを送った。
そして、マルシーニョがトラップした瞬間に、三浦はスピードに乗ってドリブラーを追い抜き、さらに加速しながらインナーラップしていった。
「ずっと外で張っていたマルちゃんが『仕掛けたいから、こっちを見て』と颯太(三浦)や僕に伝えてきていた。実際にいい形で仕掛けられたし、あそこから颯太やマルちゃんがギアをあげられるのが、今のウチの攻撃の怖さになっている」
発動させたカウンターをシナリオ通りと振り返る山本に三浦も続いた。
「練習からあの形は何度もやってきたなかで、マルちゃんと2人だけで左のあのラインは崩せる自信はある。どちらかが相手ゴール前のニアゾーンまでいって、という形を繰り返してきたので、普段の練習の積み重ねが出たと思っています」