【ベガルタ仙台を9月初勝利に導いた2つの秘話(1)】荒れたピッチを見て森山監督が選んだ「肉弾戦と空中戦」。中島元彦が要求していた“セットプレーでの役割変更”がもたらした勝利の画像
ベガルタ仙台の中島元彦 撮影:中地拓也

 勝負どころの9月に入って2分け1敗と、白星から遠ざかったまま迎えたレノファ山口との6ポイントマッチ。敵地・セービング陸上競技場へ乗り込んだベガルタ仙台の、森山佳郎監督がキックオフ前に授けた指示は単純明快だった。

「ゴールネットをひとつ揺らして、相手には揺らさせずに勝ち点3を取る」
 無理もない。キックオフされた14時の気温が34度超。真夏のような日差しが降り注ぐピッチは芝生が荒れ放題で、下の地面が固すぎるので意味がないという、ちょっぴり不可解な理由で試合前やハーフタイムの散水も実施されなかった。
 森山監督のもとで志向されてきた、パスをつなぐサッカーとの相性は、ピッチの条件的にも最悪といっていい29日のJ2リーグ第33節。山口が年に一度、下関で開催する一戦で仙台が選んだのは肉弾戦であり、そして空中戦だった。
 両チームともに無得点のままエンドが変わった75分。青写真通りにピッチ状態には関係ない空中戦で、待望の先制点をもぎ取ったのは仙台だった。
 ボランチの鎌田大夢が放った左コーナーキック。ニアサイドで宙を舞い、完璧なタイミングで頭をヒットさせたFW中島元彦が、強烈な一撃をゴールネットへ突き刺す。仙台が勝利から遠ざかっていた3戦は不発が続いていた25歳は、4試合ぶりに決めたチームトップの12ゴール目に表情をほころばせた。
「大事な試合は、セットプレーで決まるケースがけっこう多い。しっかり崩して、流れのなかで決めるのが理想ですけど、勝てたので、まあ結果オーライですね」

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