■ラストプレーで被弾した仙台は痛恨のドロー
後半開始直後の47分、ユアテックスタジアム仙台に歓声が響き渡る。右MF郷家友太が右サイドからグラウンダーのクロスを入れると、ペナルティエリア内へ右SB真瀬拓海が走り込んでいた。攻撃参加が自慢の背番号25は、右足ワンタッチシュートでGKを無力化する。仙台がリードを2点に拡げた。
ここから先は、3点目を狙いながらゲームをコントロールしていくことが求められただろう。しかし、63分に甲府が3枚替えをしてくると、直後の68分に途中出場のFW三平和司に決められてしまう。
森山監督も65分に中山を下げてMF相良竜之介を投入し、72分にはMF工藤蒼生、FW菅原龍之助を送り込む。しかし、甲府の大塚真司監督も76分と82分に交代カードを切り、攻勢を強めてくる。
森山監督は残り2枚のカードをいつ切るのかを、熟考したに違いない。後半は試合の構図が変わったものの、チームのパフォーマンスが極端に落ちているわけではない。交代のタイミングは難しかっただろう。
2対1で迎えた86分、森山監督が動く。ボランチの松井蓮之と中島を下げ、DF實藤友紀とFW梅木翼を投入する。實藤は右SBに入り、真瀬が右MFへポジションを上げた。CBが本職の實藤をDFラインに加えてリスク管理を強化しつつ、梅木にボールを収めてもらうことで敵陣でうまく時間を使う、といった狙いだろう。
指揮官の思惑どおりに時間は経過し、6分のアディショナルタイムに突入する。95分52秒、セカンドボールの奪い合いで甲府に直接FKが与えられる。ポイントはペナルティアークから数メートル甲府陣内寄りで、ほぼゴール正面である。右足でも左足でも狙える。仙台からすると嫌な位置だ。仙台は5人で壁を作る。壁の背後では相良が足を伸ばし、壁の下を狙う一撃にも備える。
97分30秒、甲府MF中山陸が放った一撃が、壁をかすめてコースを変える。GK林彰洋が精いっぱい身体を伸ばすが、ボールには届かない。ゴール右へ吸い込まれてしまう。直後、試合終了のホイッスルが鳴り響いた──。
試合後のフラッシュインタビューで、森山監督は「残酷な、結末」と切り出した。悔しさとやるせなさが織り交じった表情で、「胸を張れる内容ではあったので、ここで落とすことなく次のゲームに向かっていきたい」と続けた。勝点52の仙台は、同勝点のファジアーノ岡山に得失点差で劣り、5位のままとなっている。
次節は勝点47で9位のレノファ山口FCとのアウェイゲームだ。J1昇格プレーオフ圏を争うライバルとの直接対決は、絶対に落とせない。