■ハッとした監督の言葉「タイトルを決めるのは…」
「代表戦を含めて年間55試合ぐらい出場しました。1シーズンでこれだけ試合に出るのは初めての経験でした。休みもあまりなく、中2日、中3日の間隔で、12連戦やった期間もありましたから。このハードスケジュールを戦い抜けたのはすごく大きかったです」
ただ、シーズンを通して、すべてが順風満帆だったわけではない。連戦がたたって調子を崩した時期もあったという。そんなとき、心の支えになったのは、昨シーズンまで指揮を執ったドイツ人のアレクサンダー・ブレシン監督の言葉だった。
「昨シーズンまでクラブの指揮を執ったブレシン監督は、積極的にコミュニケーションを取ってくれる人でした。
55試合の中でうまくいかない試合が2〜3試合あったんですけど、そのときに言葉をかけてくれました。“1試合の勝負の結果を決めるのはストライカーだが、タイトルを決めるのはセンターバックだぞ”と。あの言葉は、今も心に残っていますね。
センターバックは目立たないポジションです。やっぱり花形はストライカーですから。
でも、監督からそういう言葉をかけられて、ハッとしました。実際、カップ戦でタイトルが取れましたから。心に響いた言葉でした」
監督の言葉を支えに、昨シーズンを戦い抜いた町田。だが、年間55試合というハードスケジュールをこなす一方で、頼れるセンターバックはさまざまなことに取り組んでいる。町田という人間は、どこまでも好奇心旺盛なのだ。
町田浩樹(まちだ・こうき)プロフィール 1997年8月25日、茨城県生まれ。190センチ、80キロ。ポジションはセンターバック(CB)。長身を生かした空中戦の強さと、精度の高い左足のキックに定評がある。ジュニアユース時代から地元クラブの鹿島アントラーズの下部組織で育ち、2016年にトップ昇格。翌年、Jリーグデビューしたが、直後に全治6か月の大ケガを負う。復帰後、2019年シーズンはリーグ22試合に出場。2018年7月28日のガンバ大阪戦では、プロ入り初得点を決めた。2022年1月、ベルギー1部ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズへ1年半の期限付き移籍を発表。2月13日のシント=トロイデン戦で先発デビュー。その後、負傷で試合に出られない日々が続くも、2023年1月に復帰し、3月には同クラブへの完全移籍を発表。翌4月には、早稲田大学人間科学部を卒業したことを発表した。同5月9日、クロッキーカップ決勝で、ロイヤル・アントワープFC相手に決勝ゴールを挙げ、クラブを110年ぶりの優勝に導いた。日本代表としては、2016年、AFC U-19選手権のメンバーに選出され、準決勝のベトナム戦で初先発。2019年、AFC U-23選手権タイ2020予選に挑むU-22日本代表メンバーに選出され、世代別代表に復帰。その後、2021年の東京オリンピックでは、1試合に出場。2023年3月、キリンチャレンジカップ2023にA代表として初招集され、同年9月のトルコ代表との国際親善試合に先発出場。A代表デビューを果たした。今年6月、結婚を発表。また、サッカー少年たちを支援するプロジェクトにも携わっている。