■ホームチームに訪れた「4度の大チャンス」

 前半の立ち上がりはホームの鴨川が連続してチャンスをつかんだ。

 世田谷のDFとDFの間のギャップを衝いて、トップの齊藤彩花や右サイドの松尾美月が守備ラインの裏に走り、それにタイミングを合わせて縦パスが通った。前半給水タイムの前までに、オフサイドを取られた場面も含めて4度ほどビッグチャンスをつかんでいた。

 ところが、給水タイムの後は裏に抜けるランニングが見られなくなり、アーリークロスを入れるだけの攻撃になってしまった。

 すると、35分に世田谷がカウンター気味の形から先制ゴールを奪う。右サイドからのサイドチェンジのパスを受けた左サイドハーフの藤原愛里が持ち込んで、そのままシュートを突き刺した。

 1点を追う鴨川は後半に入って、前線の選手の並びを変えたり、選手交代を使って攻撃を試みるが、前半立ち上がりのようなきれいな攻撃パターンは作れなかった。ただ、左サイドからのドリブル突破が効果的で、何度か決定機を作っていた。

 逆に言えば、世田谷が自分たちから見て右サイドの守備を補強して、このサイドさえ止めてしまえば勝利に近づけたはずだったのだが、そのサイドからの崩しから同点にされてしまう。83分に鴨川の左サイドに顔を出した松尾のクロスに齊藤が合わせて同点とし、そのまま引き分けて両チームが勝点1ずつを拾って終了した。

 見ていて、「ああ、もう少し、ここをこうすればなぁ……」といった点が多く、とてももどかしいような内容だった。

 鴨川でいえば、同点ゴールに絡んだ2人はパワーがある良いFWだったし、CBの位置から巧みにロングボールを使った松尾菜月や中盤で運動量豊富に広い範囲をカバーしたキャプテンの高塚綾音などが目立っていたし、世田谷の2トップの一角、新堀華波の相手のマークを外してから動き直してパスを受けるテクニックなど見るべき選手は何人もいた。

 だが、もう少し補強したいポジションも散見され、また、交代カードも限られるといった印象を受けた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4