■「メキシコを破ってアルゼンチンと戦おう」
2日後、第2戦の相手はアルジェリア。初戦でメキシコと1-1で引き分けたチームだ。松本育夫監督は柱谷に代えて鈴木淳(仙台向山高)を先発のFWとして送り込んだ。前半38分、尾崎のFKを受けたその鈴木が見事なダイビングヘッドでゴールを襲ったが、アルジェリアGKムールード・ラハマニが奇跡的なセーブでこれを止めた。後半も攻め続けた日本だったが、決勝点を奪うことができず、0-0の引き分けに終わった。
2試合を終えて1分け1敗の勝ち点1。同じA組では、スペインがメキシコに2-1で競り勝って2連勝、勝点を4に伸ばして首位、2位は勝点2のアルジェリア。しかし、グループリーグ最終日にスペインがアルジェリアに勝てば、日本が2位に浮上し、準々決勝に進む可能性がある。
「自力でメキシコを破り、アルゼンチンと戦おう! マラドーナと戦い、次はメダルだ」
メキシコ戦を前に、松本監督は選手たちにこう檄を飛ばした。A組で2位になれば、準々決勝でB組1位と当たる。B組は、アルゼンチンとポーランドがすでに2勝、残るユーゴスラビアとインドネシアはともに2敗で、すでに準決勝進出2チームが決まっていた。残るは1位か2位かという試合であり、ポーランドが得失点差でアルゼンチンを1点リードしていたが、最終戦でアルゼンチンが勝ち、1位になるのは決定的と思われていた。それほど、アルゼンチンとマラドーナの力は隔絶していた。