後藤健生の「蹴球放浪記」第227回「スラム街でサイン攻めにあう日本人」の巻(1)マラドーナの栄光と征服者スペイン、不法占拠の地のスタジアムの画像
6月8日、「ネサ86」でデンマークがウルグアイに圧勝した試合の未使用入場券。提供/後藤健生

 世界中、至るところにスタジアムがある。蹴球放浪家・後藤健生が渡り歩いた先には、スラム(都市部で極貧層が居住する過密化した地区)の中のスタジアムもある。2026年のワールドカップが行われるメキシコにも、そんなスタジアムがあった――。

■マラドーナの大会となった「W杯」

 1986年のメキシコ・ワールドカップはディエゴ・マラドーナのための大会となり、アルゼンチンが1978年の地元開催の大会以来2度目の優勝を遂げましたが、この大会には24か国が参加。12のスタジアムが使用されました。

 開幕戦や決勝戦が行われたメイン会場は、首都メキシコ市のエスタディオ・アステカ。1970年にメキシコが初めてワールドカップを開催するにあたって建設された11万人を収容する巨大スタジアムで、1968年に日本がオリンピックで銅メダルを獲得した3位決定戦も、このスタジアムで行われました。2026年の北中米ワールドカップの会場にもなっています。

 メキシコ市ではアステカのほか、エスタディオ・オリンピコ・ウニベルシタリオも会場となりました。ここは1968年のオリンピックで開閉会式や陸上競技が行われた競技場。メキシコ国立自治大学(UNAM)所有のスタジアムです。UNAMは何人ものメキシコ大統領を輩出した超名門大学ですが、同時にプロ・サッカーチーム「クルブ・ウニベルシダード・ナシオナル」、通称「UNAMプーマス」の母体ともなっています。

 設立当初は大学生のチームでしたが、その後、プロ化してメキシコ・サッカー界の名門プロチームとなったのです。日本の大学は今ではプロ選手を多数輩出する存在となっているのですから、いっそのことプロ化してJリーグ入りを目指してもいいのではないでしょうか? メキシコや他の南米諸国にも、大学を母体としたプロチームはいくつもあります。

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