■浦和コーナー「パリ五輪で金のスペイン代表」と

 ペナルティマークを基準にして、そこからほぼ縦に浦和の選手が並んでキックされるボールを待っている。さらに浦和は、ファーサイドに1人をおく。鳥栖はニアサイドに1人入れて、ファーサイドの浦和の選手にはマンマークをつける。鳥栖はゾーンとマンマークの併用の守備なのだが、浦和の縦に固まっている選手に対応するために同じような陣形を取っている。

 渡邊のキックが蹴られた瞬間に、ゆっくりと左右に散らばっていく浦和の選手たち。ボールがファーサイドに蹴られ、折り返されたボールをサミュエル・グスタフソンがヘディングをするが、跳ね返される。
 この縦に密集して散らばるセットプレーのやり方は、鹿島アントラーズも採用しているし、パリ五輪でのスペイン代表も同じやり方をしていた。利点としてマークがつきづらいことが挙げられる。
 守備側にとってボールしか追えない状況になるので、人についていくのが難しくなってくる。自分の近くに人がいるのはわかるのだが、ボールから目が離せないので、相手について行けなくなってしまうのだ。したがって、浦和のフリーの選手がゴール前に生まれてしまうのである。

 続いて、35分のプレーを分析する。

 鳥栖の福田晃斗がペナルティエリアの味方にパスを出す。ヘディングでクリアしたのが、浦和CBの井上黎生人だった。ここは、正面にクリアしないでサイドにクリアしなければいけない場面だった。井上は、クリアしたボールを味方へパスしようとしたのだが、ボールが短かったので、鳥栖の左SB堺屋佳介に先に触られてシュートされてしまう。
 井上のヘディングを見れば、彼はヘディングが得意な選手だとわかる。得意だからゆえに、味方にボールが渡ると考えてヘディングでパスを出した。だが、リスクマネージメントを考えれば、サイドにクリアしたほうが良かった場面だった。状況判断という点に関して井上は今後、吸収すべきことがあるだろう。

 次に49分の場面を解説する。

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