圧倒的なフィジカルの相手に「対抗する」ために
私は、今大会の組分けが決まったとき、ナイジェリアが最もやりにくい相手ではないかと考えていた。とにかく体が大きく、足も速く、並外れたパワーがある。なでしこジャパンの小柄な選手たちに体をぶつけてきたら、パスワークも分断されてしまうだろう。
2021年の東京オリンピック後に就任した池田太監督が努力してきたのは、そうした圧倒的なフィジカルの相手に対抗できるチームづくりだった。フィジカルな戦いを挑んでくる相手に対抗するには、「プレースピード」を高めるしかない。
その要素は、切り替えの速さ、アプローチのスピード、パススピードなど、いくつもあるが、何より重要なのは判断の速さに違いない。パスを受けてさばく判断だけでなく、どこにポジションを取るかの判断で相手に先んじることができなければ、「フィジカルの餌食」になってしまうからだ。
このナイジェリア戦で、前半の限られた時間だけとしても、その池田監督の努力が実を結んだのは、称賛に値する。それだけに、それを保つ時間が短かったこと、後半にはほとんど出せなかったことは、小さくない懸念だ。