大岩ジャパン「パリ五輪グループリーグ3戦全勝」で分かった優勝への強い意思(2)窮地を救った「3戦無失点の立役者」小久保玲央ブライアンと「武闘派に見える」クレバーSBの画像
数々の好セーブでチームを救った小久保玲央ブライアン。撮影/渡辺航滋(Sony α‐1)

 パリ五輪グループリーグ第3戦となったイスラエル戦。すでに、予選突破を決めている日本は準々決勝に向けて、ターンオーバーしたメンバーを大幅に投入。予想通りの起用となったが、その目的は「勝つこと」だった――。大岩監督の意思が分かる2人の交代と初披露となった新システム、そして、その意思を崩しかねない危険な時間帯とチームの窮地を救った2人の存在を中心に、イスラエル戦を振り返る。

冷静だった佐藤恵允「細谷真大への絶妙パス」

 時計が後半の45分を回り、アディショナルタイムが8分と表示された頃、日本は相手の攻撃を自陣の中盤右で止めた。植中朝日が激しく相手に体を寄せてボールをつつき、外側で受けた西尾隆矢がワンタッチで前方の佐藤恵允へパス。佐藤も時間をかけずに中央の藤田譲瑠チマに送る。
 センターサークルの中でボールを受けた藤田は、大きく開けた中央のスペースを、首を左右に振りながら持ち上がる。左外には三戸舜介、その内側に左サイドバックの内野貴史が駆け上がり、ペナルティーエリア手前には細谷。その右に藤尾、さらに右外に佐藤。藤田はわずかに体を左に開いて前進し、左の3人に相手の意識を集中させると、右足裏でボールを小さく引き、間髪を入れず右斜め前、ペナルティーエリアに鋭いボールを送る。
 走り込んだのは佐藤。藤尾がニアポスト前にパスを要求しながら動く。しかし、佐藤は冷静だった。
 その藤尾の背後で完全にフリーになった細谷にワンタッチで低いパス。細谷は右足インサイドでイスラエル・ゴールを破った。まさに大岩監督の狙いどおりの攻撃。2トップにしたことが生きた決勝点だった。
 だが、その10分ほど前、試合を完全にコントロール下に置いていた時間帯に、日本はあやうく試合を失うところだった。

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