日本のゲーム支配に寄与した「クレバー武闘派」

 ひとつは「アクシデント」だった。相手の長いパスを木村誠二がヘディングで味方につなごうと落としたのだが、それが相手について木村の近くにきていた内野の体に当たり、イスラエルFWリエル・アバダの前に落ちたのだ。アバダはそのまま前進してシュート。だが、小久保が余裕をもってセーブ。
 もうひとつは「ミス」だった。右サイドでのハイテンポのつなぎがあった後、佐藤がセンターバックの鈴木海音にパスをしようとしたボールが、イスラエルFWデル・テルグマンに直接、渡ってしまったのだ。これも決定的なピンチだったが、小久保の守備は完璧だった。
 相手が前線からプレスをかける中、日本はGKとDFラインでパスをつなげ、そこからMFやウイングに渡して攻撃を組み立てようとしていた。そうした中で、自陣でミスが起こったら、致命的になる恐れがあったが、日本の技術は本当に高く、そのたぐいのミスは、このプレーまでほとんどなかった。
 だが、ミスが起きても、日本には小久保がいた。グループステージ3連勝、無失点の立役者が小久保であることは、誰の目にも明らかだろう。
 もうひとつ、この試合で私の目を引いたのは、右サイドバックとしてフル出場した西尾のプレーだった。味方が奪って西尾につけたパスを、西尾はほぼミスなくさばいた。しかもワンタッチでのさばきが非常に見事だった。ここでワンタッチが入ることで、MFの選手たちはフリーでボールを受けることができ、それが日本の「ゲーム支配」に大きく寄与した。
 西尾は「武闘派」のように見えるし、実際、強さを前面に出す選手だが、非常にクレバーで、確実な技術をもっていることがわかる。ワンタッチで味方をフリーにするプレーをするには、短時間のうちに状況を把握し、味方に確実に出す技術が必要だ。現代のサッカーで最も重要かもしれないそのプレーを、西尾がしっかりと見せてくれたのは、この試合の大きな収穫だった。
 GK以外は、3試合で「バックアップメンバー」を含めた全選手を使うことができ、誰が出ても高いレベルの試合ができることを示した日本。準々決勝は、8月2日金曜日午後5時(日本時間3日0時)、リヨンでのスペイン戦だ。

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