OA小野伸二を擁した20年前のパラグアイ戦との違い、三戸舜介らの開始直後の「無酸素運動」と勝点3逆算「必然の退場」【パリ五輪8強入り「U-23サッカー日本代表」強さの秘密】(1)の画像
パラグアイ戦で先制点を挙げた三戸舜介(左)と、そのゴールの起点となった斉藤光毅(右)。20年前の「常識」は、もはや彼らには通用しないのかもしれない。撮影/渡辺航滋(Sony α-1)

 現在、フランス・パリでオリンピックが開催されている。サッカー男子U-23日本代表は、グループステージ最終戦を残して、準々決勝進出、ベスト8入りを決めた。グループステージの戦いで見えた若きサムライブルーの強さを、サッカージャーナリスト後藤健生が解き明かす。

■2戦で感じた「試合運び」のうまさ

 パリ・オリンピック男子サッカー競技に出場しているU-23日本代表はグループリーグ2連勝で準々決勝進出を決めた。最終節で敗れても、パラグアイとの得失点差を考えれば「首位通過」もほぼ確実となった。

 オーバーエイジ枠を使うことができず、23歳以下の選手でも久保建英鈴木彩艶鈴木唯人などを招集できなかったことで不安視されていたのが嘘のようなパフォーマンスである。僕は、かなりの楽観派だったが、それでもここまでの快進撃は予想できなかった。

 メダルが重視されるオリンピックでは、準々決勝は最も大切な試合となる。ここで敗れたらメダルへの道は閉ざされるが、ベスト4進出を決めれば残り2試合で1つでも勝利すればメダル獲得となるからだ。

 そのためには、最終戦を残してグループリーグ突破を決めたことの価値はきわめて大きい。3戦目のイスラエル戦ではコンディションの悪い選手を休ませることもできるし、警告のイエローカードをもらっている選手も温存できる。

 そうすれば、中2日で戦う準々決勝ではベストメンバーで、ベストの状態で戦うことができるからだ。

 パラグアイ戦とマリ戦を通じて、強く感じたのは試合運びのうまさだった。

 勝点3を獲得するための道筋を考えて、その目的から逆算しながら戦っているのだ。美しいパスをつなぐのも、全力を出してハードワークを続けるのも、巧みな戦術を駆使するのも、すべてが勝利することを目的として整理されているように見える。

 大岩剛監督は、思うように選手を招集できない中で、そうしたチームとしての哲学をしっかりと落とし込むことに成功したようだ。

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