マンチェスターU×リバプール戦「414円」の入場券【一枚の写真が問いかける観戦の意義「サッカーは誰のものか」チケット代の現在地】(1)の画像
1977年10月、オールド・トラフォード。この1枚の写真に、あなたは何を感じるだろうか。 ©Kai.Sawabe

 サッカーは日々、発展を続けている。取り巻く環境もまた、変化を続けている。だが、その肥大化は、はたして進化と呼べるものなのか。一枚の写真が投げかける「問い」について、サッカージャーナリスト大住良之が考える。

■開いたときの感想「入場券の写真か」

「EUROでの『物価』の高さについて日本の友人とメールを交換したときに、こんな写真を送りました」

 ベルリンに在住するカメラマンのカイ・サワベ氏からメールとともに1枚の写真が送られてきたのは、ドイツで開催されていた欧州選手権(EURO)が閉幕した数日後のことだった。

 開いたときには、「入場券の写真か」といった程度の感想だった。だが、よく見ると、それはEURO24の入場券などではなく、半世紀近く前、1977年のイングランド・リーグ、マンチェスター・ユナイテッドリバプールの入場券だった。会場は、当時すでに「夢の劇場」と呼ばれていたオールド・トラフォードである。

 その値段を見て目を疑った。「90p」。すなわち90ペンス。この人気カードが、1ポンドもしないのである。当時の1英ポンドは約460円。90ペンスは414円にしかならない。

「PADDOCK OLD TRAFFORD」とある。メインスタンド1階、タッチラインに沿って設けられた立ち見席の、ピッチに向かって右半分の部分である。これは「ユナイテッド・ファン歴60年近く」という小嶋明氏に教わった(サワベ氏の「日本の友人」というのが、この小嶋氏である)。当時のオールド・トラフォード・スタジアムには、両タッチライン沿いの1階に立ち見席が設けられてあり、「パドック」と呼ばれ、それぞれに名前がつけられていた。

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