■「チームには何よりも結果が必要」
引き分けが続き、降格圏の湘南ベルマーレや京都サンガF.C.との勝ち点差が3ポイントに迫っていた時期に、残留争いを問われた小林はこう語っている。
「そういうの(残留争い)を気にしなきゃいけないけど、僕たちは下を見ていないというか。実際にプレーしている感覚として、本当にあと少しで何かをつかめそうなところで勝てない。変な言い方だけど、ちゃんと負けていたらしっかりと直していかなきゃいけない。勝てていないけど、内容がいいから難しい。ただ、内容がよくてもダメなものはダメだと思うし、いまのチームには何よりも結果が必要なので」
厳しい現実と、7シーズンで7個のタイトルを取った誇りの狭間で迎えた柏戦。リードを2点に広げる追加点を奪ったのは、先制点を決めていた山田だった。後半に追いつかれたものの、キャプテンMF脇坂泰斗の勝ち越し弾とGKチョン・ソンリョンのPK阻止で7試合ぶりにつかんだ白星がターニングポイントになった。
山田は中断明けの神戸戦でも、チームの2点目と3点目をゲット。2人の退場者を出した昨シーズン王者を圧倒した4日後のFC東京戦でも2ゴールを奪った。
「あっ、きました、きました。いろいろと聞いてあげてください」
FC東京戦後の取材エリア。桐蔭横浜大から加入して2シーズン目で、ゴール数を2桁に到達させた山田が姿を現すと、小林はうれしそうに取材を振った。
もっとも、ゴール数をルーキーイヤーの「4」から3倍近い「11」に伸ばすなど、急成長を遂げながら結果も残し、川崎に勝利と自信とをもたらしているストライカーは、Jリーグの歴史に自らの名を刻んだ偉業に気がついていなかった。
(取材・文/藤江直人)
(後編へ続く)